2015年10月11日日曜日

青春の風景 アルフレッド・シスレー

見ることの誘惑 第40

青春の風景 

アルフレッド・シスレー「サン=マメス六月の朝」
1884年 油彩 キャンヴァス 54.6×73.4cm  東京 ブリヂストン美術館




東京のブリヂストン美術館でシスレー「サン=マメス 六月の朝」の前に立つと、いつも、小川国夫の「アポロンの島」を想いだしてしまう。
なぜなんだろう。

練馬美術館のシスレー展でこの絵の前に立った時、「アポロンの島」と一緒に、最近読んだばかりだった又吉直樹の「火花」も想いだした。
そういえば、高樹のぶ子の「光抱く友よ」も同じタイプの「青春」小説だったなあ、と、いまさらのように反芻したりしたものだ。
昇華する方法がみあたらない心の迷走が、ほろ苦く、切なく輝いているといった雰囲気がこれらの「青春」小説にはたちこめているような気がする。
なかでも「アポロンの島」は高揚と沈静を繰り返す繊細微妙な気分が秀逸だ。
清新で透明な空気がみなぎっている。

シスレーの絵画にも同じような清新さや透明感を感じる。
1870年代半ばの印象主義の「青春」といった雰囲気を、生涯、もちつづけたのは印象主義の画家のなかでシスレーだけではないだろうか、とも思う。

「サン=マメス 六月の朝」は、他の印象主義の仲間と同じように、シスレーにとっても転機になる1880年代の半ばに描かれている。
パリの南東、フォンテーヌブローの森の近く、セーヌ川とロワン川が合流するあたりに移り住んで「サン=マメス六月の朝」などを描いた頃も、それ以前、1870年代、パリの西、ルーヴシエンヌやマルリー=ル=ロワで描いた絵画と大きく違ってはいない。
いつも清新で透明な空気があふれている。
それはどこから、どのようにして生まれているのだろうか。
凡庸だとか温和だとかともいわれてきたシスレーの絵画。
はたして、そうなのか。
(未完)
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※つづきは、目下、作成中です。
近日中にアップ予定です。

※この文は次の展覧会で取材しました。
アルフレッド・シスレー展—印象派、空と水辺の風景画家 
東京 練馬美術館 2015920日〜1115